背景

半導体製造工場の空気処理ユニット（AHU）は、製造環境において安定した温湿度管理という重要な役割を果たします。製造工場内では空気の温湿度のわずかな変化でもチップの品質に大きな影響を及ぼし、ダウンタイムにかかるコストも高くなってきます。

空気処理システムはまた、製造工場内で一番のエネルギー消費設備です。米国北東部にある半導体製造工場では、エネルギー消費を減らす方法として、当然ながらエアハンドラーに着目しました。このプロジェクトでは、AHU のコイル 137 個を対象としました。AHU のほとんどのユニットには加熱および冷却コイル両方が含まれています。

ソリューション

一般的にエアコイルのクリーニング方法は 3 つありますが、それぞれにメリットとリスクがあります：

• 高圧水：効果的に洗浄しますが、コイルパックの奥深くまで汚れが入り込み、デリケートなコイルフィンを曲げてしまう場合があります。
• 低圧水：コイルフィンへのダメージのリスクは減りますが、汚れや微生物膜を取り除く効果が弱まります。さらに、洗浄時間が長くなり、作業者の化学薬品への暴露リスクが高くなります。
• 強力な化学薬品の使用：金属酸化物を除去することで「ピカピカでクリーン」な外観に仕上がりますが、汚れや微生物膜を完全に除去できない場合があります。また、刺激の強い化学薬品を使用することで、作業員の化学薬品への暴露リスクが高まり、長期的にみたコイルの耐用年数をを損なう恐れがあります。

このような不利な条件を克服するために、この製造工場はナルコ ウォーターが特許を取得した COIL-FLO プログラムを選びました。このプログラムには 4 つの重要な特徴があります：

• 少なめの水で 500 psi の水圧が出るようにし、コイルへのダメージリスクを減らして廃棄物の量を削減
• 低アルカリ性/界面活性剤の混合クリーナーで、水の量と必要な化学薬品を減らし、汚れがコイルパックの奥深くまで流れ込むリスクを軽減。ほとんどの場合、洗浄水は洗浄後、製造工場の衛生・排水施設に送られます。
• 洗浄後にコイル表面とドレンパンに使用する殺生物剤は、微生物膜の再発を防ぎ、腐食リスクを減らしてクリーニング間隔を長くします。
• COIL-FLO クリーニングは、訓練を受け、資格をもったサービス担当者が、適切な個人用保護具（PPE）を身に着け、安全手順に沿って行います。

さらに、COIL-FLO プログラムでは、サンプルとなる AHU をクリーニング前後、そして定期的にモニタリングします。このような手順を踏むことでパフォーマンス基準を確立し、業務改善率と省エネ率を数値化して、オペレーションのライフサイクルの長さを確認することができ、お客様の投資に対するプラスのリターン評価に役立ちます。

このお客様の場合、 COIL-FLO プログラムのパフォーマンスは次のように検証されました：

1. 8 つのサンプル AHU を選んで測定：クリーニング前に直接および間接的な測定を行いました。
2. クリーニング完了後に、同じ AHU に直接または間接的な測定を行いました。
3. この代表サンプルをもとに、全体的な予測を計算し、年間節約率を数値化しました。

結果

空気側の冷却コイルを測定した結果、１AHU につき 11.5% の平均熱伝導の改善が見られました。これは、$69,881 相当の年間節約です。

ファンシステムでもエネルギー効率の改善が見られ、１AHU につき平均改善率 17.95% でした。この製造工場においては、$48,021 相当の推定年間コスト削減になります。

全体として、このお客様のケースでは、COIL-FLO プログラムにより年間 122 万 kWh の省エネを達成しました。これは、$117,902 相当に匹敵し、さらに 900 トンの CO₂ 排出量削減にもつながりました。このお客様は、たった 1.1 年で経済投資に対するプラスのリターンを達成できました。注目すべきなのは、上記にはチルド水必要量の削減から生じる節約は含まれていない点です

「エアコイル効率改善による省エネ」が最初に紹介されたのは SESHA（Semiconductor Environmental, Safety & Health Association）の年次シンポジウムでした。