ルイジアナ州ガリービルにあるエコラボのナルコ ウォーター工場
ウォーター・スチュワードシップ・リーダーの認定を取得
2019年2月発行 | 2024年10月改訂
見識
エコラボは、水関連ソリューションおよびサービスのグローバルリーダーとして、スマートな水管理、保全、スチュワードシップを通じて、安定して水を確保できる未来づくりに取り組んでいます。当社は以下を実践しながら、2030年までに、水に関わるネット・ポジティブ・インパクトを引き続き実現していく予定です。
- 運営施設における水の削減、リサイクル、補給。当社は、2018年を基準として、水資源への影響を全社で生産単位あたり 40% 削減することを目標としています。
- リスクの高い施設で絶対取水量の 50% 以上を再利用することで、地域の水域を保護する。
- 高リスク水域のエコラボ製造施設でアライアンス・フォー・ウォーター・スチュワードシップ(AWS) の水準を満たし、AWS 認証を取得することで成果を達成する。
ルイジアナ州ガリービルにあるエコラボの製造施設は、こうした目標達成に大きく貢献しています。ガリービルの施設は、水処理用化学混合物とポリマーを主に製造する化学工場です。エコラボのガリービル施設は、米国最大の水域ミシシッピ川流域の一部であるミシシッピ川下流域に位置しています。工業用水はミシシッピ川から直接取水し、工場内で処理されます。飲料水に関して当施設では、セントジョン教区からの水に依存しており、セントジョン教区はライオンズ水処理プラントから取水しています。この水処理施設もまた、ミシシッピ川を取水源としています。
ガリービル施設は、AWS 認証の取得、工場におけるスマートな水管理アプローチの強化、革新技術の導入といった、水をめぐるエコラボの全社的な目標推進のための優先的拠点に指定されました。
活動
企業規模の水に関する目標達成に向けて、現地のチームは、2018年から2030年にかけて、生産量 1 トン当たりの年間使用量を 40% 削減することを目標に掲げました。
施設の水バランスの改善に向けて以下のプロジェクトを立ち上げ、全体的な水使用量を削減するために実践しています。
- 工場による河川水の取水量を削減するため、複数のサンドフィルター逆洗システムを再利用
- ラテックス使用エリアでの洗浄水削減キャンペーン活動を強化することにより、水使用量を削減
- 鉄道車両と反応槽の洗浄時間を標準化することで、全体的な水使用量を削減
- 脱イオン水装置の再生から使用済み腐食剤を回収
- 無水小便器を含むトイレの改装により、飲料水の使用量を削減
- 冷却塔の置き換え
- ポンプシールフラッシュの交換とポンプシールポットの設置
成果
工場における改善は、工場の操業効率アップとエコラボのサステナビリティ目標達成に向けた有意義な一歩となったことが実証されました。
地域の水域の全体的な健全性を向上させる目的で、また、2030年ポジティブインパクト達成に向けたエコラボの取り組みの一環として、当社は事業を展開する高リスクな水域で AWS 認証取得を優先しています。
ウォーター・スチュワードシップのこれまでの経緯
エコラボは、自社施設でのサステナブルな水使用に加え、地域レベルで他の企業と協力する取り組みを進めています。製造施設全体の水管理における包括的アプローチを進めるエコラボの取り組みに沿って、当社は2018年に、ガリービル施設において、アライアンス・フォー・ウォーター・スチュワードシップ(AWS)バージョン 2.0 国際水基準のコア認定を取得しました。当施設では、コア認定を維持するために、AWS の要件に関する最新情報を常に把握しています。
ミシシッピ川流域における共通の水問題を特定するため、エコラボのスマート・ウォーター・ナビゲーターと世界資源研究所(WRI)の Aqueduct Atlas の知見を活用して総合的なリスク評価を実施し、共通の水問題と施設レベルでの水問題を明らかにしました。水使用量削減プロジェクトは、リスクの確率と施設レベルおよび地域の利害関係者への影響を鑑みつつ、優先順位付けされました。
エコラボのウォーター・スチュワードシップによるアプローチは、自社の業務内だけでなく、当社が事業を展開する地域内の水問題にポジティブな影響をもたらすことを目標としています。ガーリービルの施設と地元の利害関係者にとって、水に関する最大の課題として挙げられるのが、高潮や降雨の影響を受けるポンチャートレイン湖に近いことによる洪水の被害です。さらに、メキシコ湾岸に近接していることから、ハリケーンや、海面上昇による高潮被害といった自然災害のリスクもあります。また、水関連のインフラに影響を与えかねない凍結の危険性もあります。重金属汚染や、大雨後の湖や川への農薬流入、物質の不適切な廃棄や封じ込めなどが原因で、水質汚染は大きな問題となっています。地中から水、石油、天然ガス、鉱物資源を採取することによって生じる地盤沈下の問題も大きな課題です。土地開発や汚染により、湿地や湿地に生息する生物種の減少も懸念されます。また水インフラの問題も特定され、これが他の水関連の課題をさらに悪化させています。
こうした問題に効果的に対処するために、ウォーター・スチュワードシップ・アプローチに積極的に取り組むことで、持続可能な敷地内での水収支と水質の継続的な改善を目指しています。当社の包括的なアプローチには、重要な水関連エリアと水、除菌、衛生(WASH)への重点的な取り組みが含まれており、これらすべての重要分野で当社が継続的に進歩していくには、積極的な水管理が欠かせません。
エコラボ・スマート・ウォーター・ナビゲーターを使って AWS の 5 項目の進捗状況を数値化すると、ガリービルの施設は、水成熟度曲線で「ウォータースマート」 となります。水成熟度曲線は、施設の水戦略および管理計画の状態を数値化して図に表したものです。曲線上に示された施設の位置は、水管理と戦略、目標設定、水管理の実践、ウォーター・スチュワードシップを含む一定の基準によって決定されます。この基準には、AWS フレームワークの 5 つの目標に沿った原則が盛り込まれており、どちらも、確実な水管理を行うためには施設のオペレーションの内外において継続的な改善と連携が必要なことが強調されています。
サステナブルな
水質バランス
ネット・ポジティブ・ウォーター
当社の事業における持続可能な水収支とスマートな水管理へのアプローチは、地域ごとの水に関わるネット・ポジティブ・インパクトを実現するための重要な要素です。これらの企業目標に沿って、各地域のチームでは、2018年から2030年にかけて、施設における生産量 1 トン当たりの年間水使用量を毎年 40% 削減することを目標に掲げました。エコラボのガリービル施設のチームは、2030年ポジティブ・インパクト目標達成に向けて、すべてのオペレーションで水使用量を削減できる機会を評価しました。水使用量削減プロジェクトの実施は、リスクの確率と施設レベルおよび地域の利害関係者への影響に基づいて優先順位が決定されました。
水質
水質へのアプローチ
工場用水と排水の水質を良好に維持するため、工場内で水質検査を毎日実施するほか、ゲリービルの排水許可に準拠するよう外部業者によって排水を毎週検査しています。工場では、厳密な検査計画および詳細な環境流出の緊急対策を用意しており、これらは AWS 標準の導入により一層強化されています。水はミシシッピ川に直接排出されるため、良好な水質状態を達成する取り組みは、ガリービル施設の集水域における最も重要な水管理エリア(IWRA)の健全性維持に役立ちます。
水管理
水管理のアプローチ
工場レベルでは、安全衛生環境(SHE)部門(SHE マネジャーや SHE スペシャリストの役職を含むが、これらに限定されない)が、ユーティリティ効率プログラムと、環境規制に対するコンプライアンスを統括する最終責任者を務めています。規制の最新情報や排水コンプライアンスに関するお問い合わせは、エコラボの環境責任者までご連絡ください。施設の水関連のコンプライアンス情報は、ご要望に応じて入手可能です。これには、施設において将来的なインシデントの発生を防ぐために必要な是正措置も含まれます。さらに、エコラボの CDP 水セキュリティレポートでは、違反やそれに関する是正措置も開示しています。
会社の最上級ビジネスリーダーと部門責任者で構成されるサステナビリティ・エグゼクティブ・アドバイザリー・チーム(SEAT)が、本社サステナビリティ・チームを指導するとともにアドバイスを提供します。また、エコラボのサステナビリティ、ウォーター・スチュワードシップおよび安全・衛生・環境(SHE)に対する見解は公開されており、水関連の問題とコンプライアンスに対するエコラボの取り組みおよびガイダンスの役割を果たしています。 エコラボのサステナビリティに対する見解は、社内でのサステナビリティに関するグローバルな取り組み、およびお客様への影響を具体化するものです。 エコラボのウォーター・スチュワードシップに関する見解は、事業やコミュニティ、自然のためになる水資源の使い方を自社とお客様に対して確認するなど、責任あるウォーター・スチュワードシップへのエコラボのグローバルな取り組みを強化するものです。 エコラボの SHE ポジションは、グローバルな事業活動における、安全衛生環境に関する優れた慣行とパフォーマンスへのエコラボのコミットメントの概要を示します。
重要な水関連エリア
水、除菌、衛生(WASH)
共同の取り組み
工場内における操業上の改善策に加え、エコラボのガリービル施設の外部ウォーター・スチュワードシップ活動も継続して行っています。工場および関連する地元の利害関係者が抱える共通の課題には、洪水、自然災害、水質汚染、地盤沈下、湿地や湿地に生息する生物種の減少、水インフラなどがあります。こうした共通の課題に対処するため、エコラボは流域内の他の水利用者とも連携しています。
エコラボは、1996年にナルコ ウォーターと Marathon 社によって立ち上げられたグループ、Community Action Panel(CAP) に隔月で参加し、水に関する問題について地元の企業や地域住民を含む地元の利害関係者との関係を築いています。エコラボは、CAP と AWS の状況を常に伝え、AWS 基準の成果の領域 5 つの慣行についてフィードバックを求めています。
エコラボ財団は、ミシシッピ州ウィルキンソンの「リーベン湖氾濫原再建プロジェクト」を支援しています。ザ・ネイチャー・コンサーヴァンシー(TNC)とのパートナーシップを通じて進められるこのプロジェクトは、10,000 エーカーの湿地帯を復元して利用価値を高め、121 億ガロンの洪水時の貯水機能を地域コミュニティに提供します。
エコラボは、ルイジアナ水シナジープロジェクト(LWSP)の参加企業です。2012年に「持続可能な開発のための米国経済人会議」(USBCSD:US Business Council for Sustainable Development)によって設立された LWSP は、ミシシッピ川下流域の 20 社を超える企業と連携し、水供給、水質、雨水、沿岸の回復力に関する幅広い問題に取り組んできました。
地域のウォーター・スチュワードシップの取り組みに加え、エコラボのグローバル寄付プログラム 「ソリューション・フォー・ライフ」は、TNC およびプロジェクト WET 財団とのパートナーシップやその他のプロジェクトを通して、淡水を保全・保護する当社の使命を着実に果たしています。