視覚的な清潔さ:規制ガイドラインの意味するところ

執筆者:Thomas Altmann(トーマス・アルトマン)- クリーニング検証担当グローバル CIP/COP テクニカルマネジャー

視覚的な清潔さ:規制ガイドラインの意味するところ

「視覚的な清潔さ(Visually Clean)」は、あらゆる薬事規制(FDA、PIC/S、GMP)で使用される言葉です。簡単に言うと、医薬品工場で用いる機器は、使用前に視覚的な清潔度を点検しなければならないことを表しています1

たしかに理にはかなっていますが、実際、標準的なオペレーションにおける「視覚的な清潔さ」が何を意味するのかや、それをクリーニング検証のために文書化する方法を 100% 明確にしているものはほとんどありません。​​​​​​​ 特によく上がってくる疑問には次のようなものがあります。

  • 残留物はどのように見えるのか?
  • 視覚的しきい値とは何か?
  • 機器の構造材は残量物の見え方にどう影響するのか?
  • 検査官はどのくらいの頻度で視力検査を受けるべきか?

以下に、これらについて簡単に解説していきます。

 

残留物はどのように見えるのか?

機器の点検は、何に注意すればよいのかを把握したうえで行わなければなりません。検査官はプロセス残留物と洗浄剤 / 除菌製品の残留物の違いが可能な限り区別できなければならず、低量の残留物の見え方を種類ごとに把握している必要があります。また、検査官は、視覚的に清潔な表面がどのように見えるのかや、スチール(鋼)の色、傷、その他の損傷がどのようであれば次の製造過程に影響しないのかを理解している必要があります。

たとえば、医薬品有効成分(API)は粉末の状態で現れることが多く、洗浄剤の残留物はシミ状に見える場合があります。

 
視覚的な清潔さ:規制ガイドラインの意味するところ

API 残留物は粉末状で現れることが多い。

視覚的な清潔さ:規制ガイドラインの意味するところ

洗浄剤の残留物はシミとして現れることが
多い。

洗浄剤の残留物は、「視覚的な清潔さ」を調べる検査官に見落とされがちです。食品・飲料用の洗浄剤を使用している製薬会社では、腐食防止剤や特定の界面活性剤などの非水溶性の残留物が API の残留物と思いがけない相互作用を起こし、製造される製品に影響が及ぶ可能性があることに注意する必要があります。

 

機器の構成材は残量物の見え方にどう影響するのか?

残留物の見え方は、検査する機器に使用されている構成材によって異なる場合があります。医薬品工場の機器は約 90% がステンレス鋼でできており、残りはガラスやゴム、テフロン / EPDM などのポリマーが大半を占めます。

機器を選ぶ際や、検査官のトレーニングをする際は、ポリマー表面の残留物が、ステンレス鋼製機器に付着した残留物より見つけにくいことにも注意しましょう。

とはいえ、ステンレス鋼製の機器も、高温で使用すると時間ととともに変色します(またはその可能性があります)。そのため、ある程度使用した機器は納品時と比べて残留物の特定が困難になります。機器の表面の傷が増えて、視覚的な清潔さがはっきりと確認できなくなってきたら、再研磨(可能な場合)または交換してください。

検査官は、各種残留物が様々な表面に
どう現れるかについて訓練を受ける
必要がある。

視覚的な清潔さ:規制ガイドラインの意味するところ

残留物の見え方は、機器の仕上げ
(ステンレス鋼かテフロンかや、新品 / 研磨済みか変色したステンレス鋼製かなど)に
影響されることがある。

視覚的しきい値とは何か?

視覚的しきい値は、 API / 残留物の濃度がどの程度のときに見えるようになるかを意味します。各メーカーは、API / 残留物ごとに視覚的しきい値を決定し、それを API / 残留物の毒性学的に有意であるときのレベルと比較しなければなりません。視覚的しきい値がその API / 洗浄剤残留物の所定の毒物学的有意レベルよりも低い場合は、視覚的な清潔さの検査が有効な手段となります。

下記の分析は、パラセタモール(比較的リスクの低い API)がどのような濃度のときに見えるようになるかを示したものです。

視覚的な清潔さ:規制ガイドラインの意味するところ

検査官はどのくらいの頻度で視力検査を受けるべきか?

繰り返しますが、ガイドラインに詳しいことは示されていません。現在は、多くの企業が目視検査を行うオペレーター全員に対して視力検査を毎年受けるよう求めています。

ただし、それは法律で義務付けられているわけではありません。しかし、クリーニングの手順に問題になってきた場合は、(企業側が)検査官に徹底したトレーニングを提供し視力を定期的に検査していたことを文書化すると、しかるべきことをすべて行ったことについて規制当局を納得させるうえで大いに役立ちます。

 

その他の疑問

ベストプラクティスや視覚的な清潔さのガイドラインの詳細については、エコラボ ライフサイエンスまでお問い合わせください。当社は世界各地の医薬品製造現場で事業を展開しており、様々なメーカーがクリーニング検証プログラムに「視覚的な清潔さ」をどのように導入しているかに関する洞察をお届けすることができます。


1FDA - 21 CFR パート 211.67 (6) の要件 - 機器使用直前の清潔度検査

2Pharm. Ind. 62, Nr. 6 (2000) Buscalferri et al. − Reinigungsvalidierung

 

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