目の届かないところまでクリーンに保つ

パーソナルケア製品や化粧品(米国で OTC として登録されているものを含む)はほとんどの場合、世界中で設けられている規制によって変質や汚染がない状態を保つことが義務付けられています。

Ecolab Cleaning Validation in Pharmaceutical Production

パーソナルケア製品や化粧品(米国で OTC として登録されているものを含む)はほとんどの場合、世界中で設けられている規制によって変質や汚染がない状態を保つことが義務付けられています。製造業者は汚染が発生しないように、製造工程における重要なステップを統制することで、このような規制を満たすことが求められています。そのためには、製造・包装工程、洗浄工程、従業員の衛生管理、工場の衛生管理、原材料の管理、従業員教育など、さまざまな管理を実施する必要があります。この記事では、重要な処理設備の洗浄手順に関連するリスクに焦点を当てます。

化粧品は、連邦食品 ・医薬品・化粧品法(FD&C 法)601(c) 項 21 U.S.C. 361(c) に基づき、汚物に汚染されていたり、健康を害する可能性のある不衛生な条件下で製造、包装、または保管された場合、不純物が混入したとみなされることがあります。2022年化粧品近代化規制法(Modernization of Cosmetics Regulation Act of 2022 / MoCRA)では、不衛生な状況下で支度、包装、保管することで、結果として汚染が生じ、重大な傷害や死亡につながる可能性があるということを強調しています。

処理設備を清潔に保つ理由

消費者が製品の「欠陥」を発見した場合、数日以内にソーシャルメディアを通じて、企業ブランドに悪影響を及ぼすことがあります。ブランドイメージは、製品監査や規制当局による調査結果の報告によっても損なわれる可能性がある一方、深刻な場合には製品がリコールされることもあります。欠陥や規制上の指摘事項は、不適切な洗浄による前回の製造からの残留物や、微生物汚染による風味や粘度の変化など、さまざまな要因で引き起こされます。製造業者は、最終的に製品汚染のリスクを最小限に抑えられるよう、洗浄を行います。汚染の種類には、前回のバッチや製造工程からの残留物、OTC / 医薬品からの活性剤、微生物コンタミネーション、あるいはクリーニング製品そのものからの汚染などがあります。

清潔とみなされる基準

汚染を避けるためにどの程度洗浄するかは主観的であり、その解釈に違いがあります。洗浄のレベルは、見た目の清潔さ、残留物の少なさ、微生物の面から見た清潔さの 3 段階で評価することができます。これらの清潔さのカテゴリーは相互に関連しつつ、それぞれが異なるレベルで消費者リスクを引き起こします。消費者の安全確保を担う規制機関は、いくつかのガイドラインを示しています。次のセクションで、各レベル、関連するリスク、および実行可能な解決策について説明します。

見た目の清潔さ

ISO は、ISO 22716 / 2007:化粧品:適正製造基準(GMP) [2] で、「視覚的な清潔度」について言及した業界向けの洗浄基準を示しています。その中で、洗浄について、「表面から一般的に目に見える汚れを分離し除去することで、清潔な外観のレベルを確保するすべての作業」としています(セクション 2.8)。この基準では、機器の表面から目に見える汚れをすべて除去するよう指示しています。

あらゆる種類の汚染の中で、この基準は最も達成しやすく、確認しやすいように思われますが、実際には必ずしもそうとは限りません。「基本状態」または「開始点」の定義はあいまいです。例えば、タンクにシミや汚れがあったり、何らかのダメージがあり、新品の頃のステンレスの美しい銀色の輝きを誰も思い出せない場合はどうでしょう。どのように視覚的に清潔な基準を確立するのでしょうか?このような状況では、タンクの修復や不動態化処理を行い、機器を「基本状態」または新品同様の外観に戻すことができます。あるいは、検査(残留物、微生物)とリスク評価を通じて、品質グループと製造グループで、現在のベストな状態と新たな基準値を一致させることもできます。

見た目の清潔さはどのようにして測定できるでしょうか。現実的に、この測定方法は、手順設定、標準化、おそらく調整が必要となります。それでは、「見た目の清潔さ」の測定システムに関わるいくつかの変数を探ってみましょう。清潔さの「目視評価」には、環境的条件が大きく影響する可能性があります。照明や光が不足すると視覚に影響を与え、表面をはっきりと見ることができなくなります。そのため、この手順では光源、電球の種類、照射の角度など照明の定義を指定する必要があります。電球の状態は時間の経過とともに劣化するため、光源のメンテナンスも重要になります。場合によっては、光源の予防メンテナンス計画が必要なことがあります。

検査対象となる表面の状態も重要です。例えば、濡れた表面は乾いた表面とは異なって見え、汚れの残留物が見えにくくなることがあります。したがって、検査手順では表面の状態、つまり検査対象が濡れているか乾いているかを指定する必要があります。

視覚的な清潔さを評価する主な「ツール」は、オペレーターです。オペレーターは、評価試験を実施できる能力があると査定されているか、資格要件を満たしている必要があります。視力、矯正レンズ、色を識別する能力などの特性は、視覚的に清潔であるかどうかを評価する技術者の資格を判定するうえで重要です。技術者は適性があると判断された後、文書化された手順に従って適切な検査手法のトレーニングを受けなければなりません。

これらの手順要件が定義されたら、テストの合格基準を設定します。視覚的評価に結びつける数値的な検査結果はありません。この場合、合格基準に対する一貫した測定を保証するために、視覚的な基準が必要となります。通常は、許容できる外観とそうでないものの写真で作成された視覚的基準を使用します。クリーニングのたびに、その結果を文書化する必要があります。

残留物の少なさ

機器が「見た目の清潔さ」基準に沿って洗浄されていても、消費者の安全に影響を与える、目には見えないレベルの残留物が存在する可能性があります。例えば、OTC / 医薬品に含まれる活性剤の中には、日焼け止めに含まれる化学薬品のように視覚的に検出できないものもあります。また、すすぎが不十分だと目視では認識できない程度の洗剤が残留し、製品の品質に影響を与えることがあります。

表面を清潔に保つために、検出できる製品、OTC 活性剤、洗浄剤をすべて除去するよう提案することも可能です。ただしこれは、過度の時間と水が必要になる可能性があるため、製造業者にとって経済的ではありません。米国では、FDA が OTC / 医薬品に対してリスクベースのアプローチを推奨しています。このアプローチを OTC 化粧品に適用すると、消費者が使用しても 「安全なレベル 」まで残留物を減らすことができます。多くの場合、その 「安全なレベル 」とは毒性学的評価に基づいており、次のバッチに持ち越される残留量が、観察できる程度の影響や有害事象を発生させるレベルをはるかに下回ることを保証します。これは、製造業者が存在する可能性のある残留物と、それら残留物の安全レベル、残留物レベルを確認する試験方法、そして残留物をその安全レベルまで確実に除去する洗浄工程を把握していることを意味します。化粧品メーカーは、自社製品の成分配合を把握し、そのうえで残留物としてリスクをもたらす可能性のある OTC 活性剤や配合成分について知っている必要があります。化粧品メーカーは通常、OTC 有効成分をテストする方法をすでに開発済みで、その方法を使って、最終的な有効成分をテストし、規格内であることを確認しています。洗浄後の残留活性物質が少量であることを正確に測定するには、その試験方法を随時変更または検証する必要があります。全有機炭素(TOC)などの非特異的な試験を活用して、非活性の製剤成分が除去されているか確認することがよくあります。

化粧品メーカーにとって、より大きな未知の要素は洗浄用洗剤かもしれません。信頼できるサプライヤーであれば、洗剤の毒性に関する情報や、残留物の有無を確認するための適切な試験方法を共有するでしょう。試験方法には特異的なもの(特定の化学成分を特定するもの)と非特異的なもの(残留物の存在は示すが、特定の化学成分は示さないもの)があります。化粧品洗浄用途に使用される洗剤は、多くの場合、非特異的な方法でテストされます。例としては、全有機炭素(TOC)、導電率、pH などが挙げられます。いずれの場合も、非特異的分析法の結果から実際の残留レベルまでの相関関係や変化を調べるために、ラボでの作業が必要となります。開発には、洗浄剤メーカーのサポートが必要です。

微生物的清潔さ

化粧品業界では、機器内のバイオバーデンによる微生物コンタミネーションがより大きな関心事となりつつあります。目視による清潔度と残留物レベルの基準が満たされたとしても、化粧品を汚染する可能性のある微生物が機器に残留する可能性は残ります。生物膜の存在を示すヌルヌルした変色部分があり、微生物コンタミネーションが極端な場合は、目視検査で問題を発見することができます。多くの場合、微生物コンタミネーションは最終製品の検査によってのみ検出され、微生物数が多いと結果として製品は不合格になります。過去に工場で製造された製品に微生物コンタミネーションの問題がなかったとしても、現在の製品の傾向としてはより天然な原料に移行しており、これまでには見られなかった微生物叢が混入する可能性が高まっています。さらに、EU が化粧品に使用できる防腐剤をリストから削除するにつれて、防腐剤の選択肢が狭まり、微生物の増殖や汚染への対抗手段が少なくなっています。

残留微生物は、機器の設計と状態に応じて、マイクロスワブまたはすすぎ水のサンプリングで測定することができます。残留微生物検査には、主にサンプルポイントへのアクセスに関連する特有の課題があります。機器内で微生物増殖のリスクが最も高い場所は、配管、機器の継ぎ目、場合によっては、えぐれや孔食によって損傷した機器表面など、容易にアクセスできるのは稀です。サンプル採取のためにアクセスするのが難しいこれらの場所はまた、効果的に消毒するのが最も難しく、そのことがリスクをさらに高めています。

洗浄した機器に残留する微生物を抑制する主な方法は、除菌です。化粧品メーカーは、微生物の残留を減らすために、これまで熱消毒を実施してきました。上記のような調合の傾向により、製造装置内の微生物管理を良好に保つことの重要性が高まっています。コストを抑え、エネルギー使用量を削減するというさらなる圧力により、企業はよく使われる温水除菌から化学除菌へと移行しています。熱処理プロセスが効果的で有効に作用するためには、すべての機器の接触部分が適切な温度と時間で処理されていることが重要です。特定の製品、濃度、接触時間(通常は常温で数分間)で、確実な微生物学的効果が立証され、有効性が証明されている化学薬品による除菌が、より一般的になってきています。

まとめ

化粧品および化粧品 OTC 医薬品(米国の場合)が汚染のない環境で製造されることを保証するのは、規制上の要件であり、消費者の健康と安全にとって不可欠です。製造業者が行うべき重要なステップのひとつは、製造工程から汚染物質を効果的に除去する洗浄・除菌プログラムを開発することです。使用する製品(活性剤かどうかにかかわらず)や洗剤の残留物、あるいは微生物負荷が汚染物質になる可能性があります。「視覚的に清潔」な基準に沿った洗浄は必要不可欠であり、出発点として妥協は許されません。基準(プロセス、許容条件、トレーニング)を開発することは非常に重要です。

ここまで、「見た目の清潔さ 」だけでは不十分であるという事実を探ってきました。活性剤の残留物、洗剤の残留物、微小生物負荷など、目に見えない残留物は、製品の品質に影響を与える汚染の原因となり得ます。洗浄・除菌プログラムでは、製品の品質が影響を受けていないという確信を得るために、十分な厳密さでこれらすべての残留物に対処する必要があります。信頼できる洗浄・除菌のパートナーとして、当社はこのようなプログラムの開発をサポートします。

Ecolab Life Sciences. For Life Sciences. For Life.

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