中国太倉市のエコラボ製造工場がウォーター・スチュワードシップ・リーダーに認定

中国太倉市のエコラボ製造工場がウォーター・スチュワードシップ・リーダーに認定

世界をリードするウォーター・スチュワードシップの導入で、ビジネスとコミュニティに利益を還元。
2015年3月4日発行 | 2017年3月1日改訂

概要

水、衛生、エネルギー技術、そしてサービス分野のグローバルリーダーであるエコラボの企業目的の中核をなすのは、貴重な資源を提供して守ることです。だからこそエコラボは、お客様へのサービスを通してだけでなく、自社のオペレーションにおいても、ウォーター・スチュワードシップへの取り組みに力を入れています。

エコラボは、アライアンス・フォー・ウォーター・スチュワードシップ(AWS)の設立メンバーとして、国際ウォーター・スチュワードシップ基準(以下、「基準」)を試験的に導入しました。この基準は、環境・社会・経済それぞれに有益な、グローバルな原則と条件で構成されています。設立メンバーと複数のステークホルダーの意見をもとに開発されたこの基準は、施設における 6 段階の継続的改善の枠組みと貯水水準を定めた、水に関するガイドラインです。施設におけるウォーター・スチュワードシップの取り組みについて、実践、理解、計画、導入、評価、情報提供の指針を示し、強くしなやかな社会の未来を実現することを最終目標としています。

エコラボは2013年から2015年にかけて、AWS 設立メンバーである世界自然保護基金(WWF)と提携し、中国太倉市にある製造工場でこの枠組みを試験導入しました。この工場は、水質に特に敏感な長江デルタの太湖流域に位置しています。この試験導入の結果を参考に最終的な基準が策定され、周辺地域だけでなく世界的にもより広い範囲でこの基準の導入が進むこととなりました。そして2015年9月、エコラボの太倉工場は世界で初めて AWS 認定を取得しました。


背景

エコラボは2013年、中国太倉市にある製造施設での AWS 基準導入に向け、WWF と提携しました。エコラボと WWF は、体系的なアプローチを策定して同施設での節水プロジェクトを展開するとともに、同じ集水域を利用する他の企業や利害関係者(現地の関係当局を含む)との共同行動を推進しました。

Ecolab's Carson, CA, Plant Location

背景

2012年に操業を開始したこの排出ゼロ工場は長江デルタの太湖流域、上海近郊に位置しています。

豊かな文化と歴史を持つ太湖流域は、中国において経済的、社会的、環境的に重要な地域です。中国の国内総生産(GDP)の約 25 パーセントを占め、およそ 1 億 4,000 万人が住んでいますが、 洪水、塩水遡上、干ばつ、急激な水質変化といった様々な物理的水リスクに見舞われている地域でもあります。中国政府は対策として、同流域で操業する新たな産業施設に対し、排出ゼロ命令など厳しい要件を課しています。


政府機関による取り組み
工場での取り組みに加え、ウォーター・スチュワードシップ計画の導入プロセスを通じて、外部の政府機関による継続的な取り組みがより広く知られるようになりました。その取り組みは、業務上のリスク管理を支援するもので、以下の内容が含まれます。

Drop icon

産業パーク内での排水管理・回収:自治体の排水処理場に送水する排水管網を利用することで、河川の汚染を最小限に抑えます。

Storm Water Icon

雨水管理:未処理の雨水が河川に流出するのを防ぎます。また、すべての製造工場に対し、雨水槽の設置を呼びかけています。

Sediment Icon

河川堆積物管理:水を自然な状態に戻すため、地方自治体が 3 年から 5 年に一度、河川堆積物を除去します。2014年にはエコラボの工場付近を流れる小さなナンハン川(Nan Hun)の堆積物除去作業を行いました。

Rivers Icon

河川の再接続管理:産業パーク内にある河川区域を再接続し、河川を元の状態に戻します。

Sewage Icon

下水本管網:産業パークの下水本管網(2014年敷設)を使用して工場排水を回収し、地域の排水処理場に送ります。

Plant Building Icon

各工場に専用の送水管を設置:開発ゾーン内のすべての工場には、主管網につながる専用の送水管を使って排水を排出することが義務付けられています。また、エコラボの工場を含め、各工場から排出された排水の水質を監視するオンラインデバイスが設置されます。

ウォーター・スチュワードシップの実践

実行、情報収集、計画

水利用の影響について初期評価が実施され、工場のオペレーションや周囲の環境、現行の水管理の取り組みなども評価の対象となりました。その結果、経営陣の関与、水収支、水質、太湖流域の重要な水関連分野に対する洞察について基本的な詳細情報が得られました。また、エコラボのチームは WWF の水リスクフィルターや他の評価ツールを用いて、水のリスクと利用機会、そして地域社会や政府機関に共通の課題を明らかにしました。更新された情報は、このプロセス全体を通じて、前向きな結果を出そうと取り組むエコラボ内の利害関係者の間で共有されました。

情報収集が終わると、チームは、水リスクの軽減、コスト削減の機会特定、施設や現地の集水域が直面する水問題への対策を盛り込んだ、施設のウォーター・スチュワードシップ計画を作成しました。

導入

エコラボは2013年と2014年に、ウォーター・スチュワードシップ計画を導入しました。この計画には、工場のオペレーション効率と水の保全に関する取り組みを強化するプロジェクトのほか、 集水域での河川管理に関する地方自治体との連携に重点を置いた、地域社会の水インフラのイニシアチブなどが含まれています。

エコラボは、それぞれの施設に応じて、次のような水利用効率と水質の向上プロジェクトを導入し、水の総使用量と運用コストの削減を促進しました:

  • 洗浄水圧を上げ、シャワーヘッドを交換し、洗浄時間を短縮することで、中型容量コンテナ(IBC)の洗浄プロセスを最適化
  • 製品の貯蔵タンクや充填機の洗浄頻度を減らし、洗浄時間を 41 分から 36 分に短縮
  • 基準を確立し、再生水用タンクを設置して処理洗浄水を再利用
  • 排水処理場の消泡剤製品を交換し、膜のパフォーマンスを向上
  • 水メーターを設置して正確な水消費率データを提供し、戦略を周知して将来の水利用を改善

結果の評価

エコラボと WWF が行うウォーター・スチュワードシップの活動は、現在そして将来にわたって多くのメリットをもたらします。各利害関係者グループごとの主な成果を下の表にまとめました。

コミュニケーション

情報を開示すると、それを見た人々は、施設のオペレーションに関してより多くの情報に基づいた意思決定を下し、必要に応じて関与の度合いを調整できるようになります。AWS 基準は、コミットメント、ポリシー、計画に関するパフォーマンスの伝達を通じて透明性と責任を促すことを目指しています。エコラボは、WWF 中国、ザ・ネイチャー・コンサーバンシー、その他公共部門の各機関など社内外の利害関係者に、ウォーター・スチュワードシップ計画導入の進捗を報告しています。また、エコラボが毎年発行しているサステナビリティレポートで AWS 活動の内容を説明しています。

エコラボは、集水域の情報や水利用計画を他の水利用者と共有することで、他の企業における業務上のリスクの管理やウォーター・スチュワードシップ活動の導入を支援しています。


 エコラボの製造工場  WWF  中国政府

水利用効率の向上とコストの削減:

  • 年間 2,315m3 の排水を削減
  • 年間 2,315m3 の水道水を削減
  • 年間 820,000 RMB(132,000 米ドル)以上のコストを削減
湿地 1+1 プログラムを通じて湿地生息地を拡大 水使用量の削減によりシステム負荷を軽減
市民社会団体および政府機関職員との関係を強化 太倉化学製造地区内での共同の取組みに着手 市民社会団体および地元企業との関係を強化
ウォーター・スチュワードシップ活動によるリスク管理の重要性を周知徹底 共通の水問題への対策に関する企業のアドボカシー活動に影響を与える 公共部門の水質と水収支に関する目標達成について助言を受ける
河川への未処理放流を防ぎ、収集した雨水を利用して水の利用可能性を高める 企業の業務とニーズに対する理解を深める 企業の業務とニーズに対する理解を深める
主なノウハウを共有してエコラボの他の工場でも迅速に AWS 基準を導入 対象集水域のウォーター・スチュワードシップ活動に関するデータを集約 対象集水域のウォーター・スチュワードシップ活動に関するデータを集約
取り組みを周知徹底することでエコラボ従業員の関与を促進 将来 AWS 基準を導入するためのリアルタイムのトレーニングとウォーター・スチュワードシップの詳細な洞察を提供 将来 AWS 基準を導入するためのリアルタイムのトレーニングとウォーター・スチュワードシップの詳細な洞察を提供

継続的なウォーター・スチュワードシップ

エコラボの太倉工場は2015年7月、第三者の AWS 認定機関であるテュフ ラインランドに、AWS 基準への準拠の評価を依頼しました。 テュフ ラインランドは同年9月、同工場が「AWSコアレベルに適合」と発表、これにより太倉工場は世界初の AWS 認定施設となりました。

けれども、これはゴールではありません。太倉工場、そして世界中のエコラボ施設では、引き続きウォーター・スチュワードシップ・プロジェクトと社内外での議論を推進し、エコラボが事業を展開する集水域やコミュニティでの共同行動を進めてまいります。

 


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