
エコラボのレルマ工場(メキシコ)
ウォーター・スチュワードシップ・リーダーの認定を取得
アライアンス・フォー・ウォーター・スチュワードシップ(AWS)基準のケーススタディ
2021年11月発行 | 2025年3月更新
見識
エコラボは、水関連ソリューションおよびサービスのグローバルリーダーとして、スマートな水管理、保全、スチュワードシップを通じて、安定して水を確保できる未来づくりに取り組んでいます。当社は以下を実践しながら、2030年までに、水に関わるネット・ポジティブ・インパクトを引き続き実現していく予定です。
- 運営施設における水の削減、リサイクル、補給。当社は、2018年を基準として、水資源への影響を全社で生産単位あたり 40% 削減することを目標としています。
- リスクの高い施設で絶対取水量の 50% 以上を再利用することで、地域の水域を保護する。
- 高リスク水域のエコラボ製造施設でアライアンス・フォー・ウォーター・スチュワードシップ(AWS) の水準を満たし、AWS 認証を取得することで成果を達成する。
メキシコのメキシコシティ近郊、レルマに位置するエコラボの製造施設は、こうした目標達成に大きく貢献しています。レルマ工場は、主に水処理のソリューションと製品を製造する混合および反応プラントです。レルマ工場は、リオ・レルマ 1 流域の一部で、バジェ・デ・トルカ帯水層から取水しています。工場の水のごく一部は、敷地内の雨水収集システムと排水の再利用によって補われています。 排水は、外部業者の排水処理施設で処理された後、最終的にレルマ川に放出されます。排水は、敷地内の排水処理計画に沿って処理された後、地元の水処理施設「レシクラグア」につながっている地方自治体の下水道システムに排出され、さらに処理されます。続いて、水はリオレルマ川に放出されます。処理タンクの洗浄水は中間バルクコンテナ(IBC)に集められ、再利用されます。残水は施設内の溝に送られ、敷地内の水処理施設で処理されます。
レルマ工場は、AWS 認証の取得、工場におけるスマートな水管理アプローチの強化、革新技術の導入など、水をめぐる全社的な目標推進のための優先的拠点に指定されました。
活動
企業規模の水に関する目標達成に向けて、現地のチームは、2018年から2030年にかけて、生産量 1 トン当たりの年間使用量を 40% 削減することを目標に掲げました。
施設の水バランスの改善に向けて以下のプロジェクトを立ち上げ、全体的な水使用量を削減するために実践しています。
- 緊急用スプリンクラーシステムに使用する敷地内の雨水収集システムの拡張と運用能力の増強
- 高効率なバス・トイレ設備の導入
- 復水回収システムの設置
- 処理設備の洗浄工程の最適化
- 脱イオン水システムの効率改善
- ボイラシステム自動化の強化
- 冷却塔のアップグレード
- 敷地内排水再生システムの設置と最適化
成果
レルマ工場における改善は、同施設の操業効率アップとエコラボのサステナビリティ目標達成に向けた、有意義な一歩となったことが実証されました。

地域の水域の全体的な健全性を向上させる目的で、また、2030年ポジティブインパクト達成に向けたエコラボの取り組みの一環として、当社は事業を展開する高リスクな水域で AWS 認証取得を優先しています。
ウォーター・スチュワードシップのこれまでの経緯
エコラボは、自社施設でのサステナブルな水使用に加え、地域レベルで他の企業と協力する取り組みを進めています。エコラボは、製造施設全体の水管理に対する包括的なアプローチへの取り組みに沿って、メキシコのレルマ工場において、アライアンス・フォー・ウォーター・スチュワードシップ (AWS) バージョン 2.0 国際水基準のコア認定を取得しました。レルマ工場では、コア認定を維持するために、AWS の要件に関する最新情報を引き続き把握しています。
リオ・レルマ川流域における共通の水問題を特定するため、エコラボのスマート・ウォーター・ナビゲーターと世界リソース研究所(WRI)の Aqueduct Atlas から得られた洞察を活用し、包括的なリスク評価が実施されました。水使用量削減プロジェクトは、リスクの確率と施設レベルおよび地域の利害関係者への影響を鑑みつつ、優先順位付けされました。
エコラボのウォーター・スチュワードシップによるアプローチは、自社の業務内だけでなく、当社が事業を展開する地域内における水問題にポジティブな影響をもたらすことを目標としています。レルマ工場と地元の利害関係者にとって、水に関する最大の課題として挙げられるのが、水質と水不足、洪水です。
こうした問題に効果的に対処するために、エコラボでは積極的なウォーター・スチュワードシップ・アプローチにより、持続可能な敷地内での水収支 と 水質 の継続的な改善に努めています。当社の総合的なアプローチには、重要な水関連エリア(IWRA)と 水、除菌、衛生(WASH)への重点的な取り組みが含まれており、これらすべての重要分野で当社が継続的に進歩していくには、積極的な水管理が欠かせません。
エコラボ・スマート・ウォーター・ナビゲーターを使って AWS の 5 項目の進捗状況を数値化すると、レルマ工場は、水成熟度曲線で「ウォータースマート」 となります。水成熟度曲線は、施設の水戦略および管理計画の状態を数値化して図に表したものです。曲線上に示された施設の位置は、水管理と戦略、目標設定、水管理の実践、ウォーター・スチュワードシップを含む一定の基準によって決定されます。この基準には、AWS の枠組みの 5 つの成果に沿った原則が組み込まれており、どちらも、確実な水管理には、継続的な改善と施設で行う事業の内外での協力関係が含まれることが強調されています。

サステナブルな
水質バランス
ネット・ポジティブ・ウォーター
当社事業における持続可能な水収支とスマートな水管理へのアプローチは、全社的な水に関わるネット・ポジティブ・インパクトを実現するための重要な要素です。これらの企業目標に沿って、各地域のチームでは、2018年から2030年にかけて、施設における生産量 1 トン当たりの年間水使用量を毎年 40% 削減することを目標に掲げました。エコラボのレルマ施設のチームは、2030 年ポジティブ・インパクト目標達成に向けて、事業全体で水の使用量を削減する余地があるかどうか同施設を評価しました。水使用量削減プロジェクトの実施は、リスクの確率と施設レベルおよび地域の利害関係者への影響に基づいて優先順位が決定されました。

水質
水質へのアプローチ
良好な水質を維持するため、レルマ工場の水質チームは毎日水質を監視しており、入ってくる水は、導電率と pH の初期テストを受けます。入ってくる処理水は、脱イオンシステムに送られます。排水は現場の水処理施設で処理およびテストされ、そこでさまざまな重要なパラメータが検査されます。排水は外部の処理施設で検査され、毎月報告され、さらに毎年検査が行われます。
エコラボの施設では、雨水と排水を放出する前に、排水を目視で点検して検査を行い、地域の環境要件、許可限度、または会社の基準を満たしているか確認する必要があります。 地域の環境要件や許可制限がない場合に、隣接する水路へ雨水を排出したり、都市下水路へ排水を放出する際は、会社の基準を満たす必要があります。同施設には、流出や水関連の問題が発生した場合における万全な対応計画が用意されており、最初の事故の根本原因の分析、内部報告プラットフォームでの文書化、緩和策についての話し合いなどが行われます。現場における水関連のコンプライアンスに関する情報は、ご要望に応じて提供可能です。

水管理
水管理のアプローチ
工場レベルでは、安全衛生環境(SHE)部門が、排水試験、コンプライアンス、排水、合法的な排水の放出を担当しています。SHE マネジャーが最終責任者となり、プラントマネジャーが説明責任を負います。さらに、SHE マネジャーは、エコラボの内部グローバルサプライチェーン環境方針および該当する外部規制に従って、水監視要件に対する責任を負います。
規制の最新情報や排水コンプライアンスに関するお問い合わせは、エコラボの環境責任者までご連絡ください。施設の水関連のコンプライアンス情報は、ご要望に応じて入手可能です。これには、施設において将来的なインシデントの発生を防ぐために必要な是正措置も含まれます。
会社の最上級ビジネスリーダーと部門責任者で構成されるサステナビリティ・エグゼクティブ・アドバイザリー・チーム(SEAT)が、本社サステナビリティ・チームを指導するとともにアドバイスを提供します。また、エコラボのサステナビリティ、ウォーター・スチュワードシップおよび安全・衛生・環境(SHE)に対する見解は公開されており、水関連の問題とコンプライアンスに対するエコラボの義務を示し、ガイダンスとなっています。 エコラボの サステナビリティに対する見解は、社内でのエコラボのグローバルなサステナビリティに関する取り組み、およびお客様への影響を具体化するものです。エコラボのウォーター・スチュワードシップに関する見解は、企業として、またお客様が水資源を事業、コミュニティ、そして自然に良い方法で利用することで、責任あるウォーター・スチュワードシップに対するエコラボのグローバルな取り組みを強化します。エコラボの SHE ポジションは、グローバルな事業活動における、安全衛生環境に関する優れた実践とパフォーマンスへのエコラボのコミットメントを示すものです。

重要な水関連エリア

水、除菌、衛生(WASH)
共同の取り組み
工場内オペレーションの改善に加え、エコラボのレルマ工場外でのウォーター・スチュワードシップ活動は継続して行われています。工場、そして関連する地域の利害関係者に共通する課題としては、水質と水不足、洪水などがあります。
こうした共通の課題に対処するため、エコラボは流域内の他の水利用者と連携し、周囲の流域の関係者とともに AWS 認定に向けた活動を進めています。現場の従業員は、以下を含む数多くの社会プロジェクトに参加しています。
2022年には、クアウティトランとレルマの工場から 90 名以上のボランティアが、メキシコ州ウイスキルカンのピエドラ・グランデで、低所得世帯のために移動式貯水タンクの建設を支援しました。この貯水タンクは、人の飲食や、動物や食糧の生産に使用する水を貯え、ろ過することができます。このボランティア活動は、20 軒の家庭と 200 人を超える人々の支援につながります。
2019年には、水に関わる重要なエリアの衛生に貢献するため、エコラボのレルマ工場とクアウティトラン・イスカリ工場から 100 名のボランティアが、ザ・ネイチャー・コンサーヴァンシー(TNC)および ProNatura と協力し、メキシコシティのサン・アンドレス・トトルテペックに 2,000 本の木を植えました。
現地でのウォーター・スチュワードシップの取り組みに加えて、エコラボのグローバルな寄付プログラムである Solutions for Life は、The Nature Conservancy と Project WET Foundation とのパートナーシップやその他のプロジェクトを通して、淡水を保全・保護するという同社の使命を際立たせています。
このケーススタディは、AWS の指標 5.1.1、5.2.1、5.3.1、5.4.1、5.4.2、5.5.1、5.5.2、5.5.3 に準拠して作成されています。レルマ工場での AWS の取り組みに関する詳細は、ご要望に応じて入手可能です。詳細については、sustainability@ecolab.com までお問い合わせください。